北イタリアの森で白トリュフを採取する老人たちを捉えたドキュメンタリー。世界で最も希少で高価な食材とされるアルバ産白トリュフ。その名産地である北イタリアのピエモンテ州では、夜になると森に白トリュフを探しにやって来る、まるで妖精のような老人たちがいるという。様々な危険が潜む森の奥深く、彼らは犬とともに、伝統的な方法で白トリュフを探し出す。そして彼らはその場所を、家族や友人にさえも決して明かさない。写真家のマイケル・ドウェック監督は3年間にわたって彼らの生活に入り込み、信頼関係を築いたうえで貴重な撮影に成功。大地に寄り添い、時の流れが止まったかのような純粋で美しい暮らしを映し出す。「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督が製作総指揮に名を連ねる。2020年・第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品。
白いトリュフの宿る森評論(1)
石川梵監督によるドキュメンタリー映画『くじらびと』もそうだったように、現地の人々と関係性を築いたからこそ、映し出せる世界というものも存在している。
特に今作が扱っているのは、白トリュフということもあって、撮影といいながら、場所を特定して、盗み出すこと疑われる可能性もある中で、写真家のマイケル・ドウェックは約3年間ににわたって、トリュフハンターの生活に密着し、信頼関係を築いたからこそ、映し出せる世界でもあるのだ。
そういった経緯があったからこそ、今作は良い意味でドキュメンタリー的ではない。登場人物が自然体で、演技に思えてしまうほどカメラ慣れしているのだ。ドキュメンタリーでありながら、劇映画的でもあるという点では『狩人と犬、最後の旅』に似た雰囲気を感じることができる。
高級食材であるトリュフも、全てが高額で取引きされるわけではなく、いかに美しい形状をしているだとか、匂いはどうだとか……トリュフを好んで食べるような富裕層は勝手なことを言っているが、トリュフを獲っているトリュフハンターたちは命がけだったりもする。それでやっと見つけて、獲ってきたトリュフが、形が悪いなんて言われたらどうだろうか…….
中間バイヤーから富裕層に渡る過程で、誰が獲ってきたものかといった情報は、ほとんど伝わらない。
トリュフの獲れる環境に住んでいるトリュフハンターにとっては、近所でトリュフを獲ってくるだけで、楽にお金が入ってくるなんて思っていたら大間違いで、常に苦労の連続であり、トリュフハンターという職業自体も高齢化で絶滅しかけているという問題にも直面しているのだ。
今作はトリュフハンターや取引現場に密着したドキュメンタリーである一方で、トリュフハンターにとって大切な存在も映し出されている。
それは、トリュフを探すには、鼻の効く犬は不可欠ということ。
その犬との信頼関係が必需となってくるのだ。時々、犬の目線になるなど、人間と犬の関係性にも焦点を当てている。だからこそ、テイストが『狩人と犬、最後の旅』に似ていると思った要因なのだ