「64 ロクヨン」の瀬々敬久監督がミステリー作家・薬丸岳の同名小説を実写映画化し、生田斗真と瑛太がダブル主演を務めた人間ドラマ。ジャーナリストの夢を諦めて町工場で働き始めた益田は、同じ時期に入社した鈴木と出会う。無口で影のある鈴木は周囲との交流を避けている様子だったが、同じ年の益田とは少しずつ打ち解けていく。しかしある出来事をきっかけに、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人なのではないかと疑いを抱くようになり……。益田役を生田、鈴木役を瑛太が演じるほか、共演にも佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子ら実力派キャストがそろう。
友罪評論(20)
登場人物のほとんどが、それぞれ何かしらの罪の意識をもっていたり、実際に殺人、事故、自殺、DV…などは許されない過ちを犯している。
その中でも1番身近でありそうなのが、佐藤浩一演じる父親の息子が犯した、自動車の死亡事故だ。罪を犯した者は幸せになっていけないのか。一生1人で結婚もせず、ただ生きるだけの生活をしなくてはならないのか。
でも、その疑問は全ての罪を犯した者に共通するであろう。
瑛太の猟奇的な演技はいつも感心する。目に生気を感じないのだ。でもその瞳の奥に何か鋭さを感じる。何をしでかすかわからない恐さを感じるのだ。
また、奥野瑛太のやさぐれ感はやはりたまらない。頭にすぐ血が上って、あの下品で低俗的な態度、彼ならではですよね。
まず初めに、レビューが低すぎる人が多いなあという印象を受けた。殺人を題材にした映画は終始重いものだというのは大前提なので、そこを評価の基準にしているものは全く参考にしてはいけない。
殺人だけでなく、過去の罪に囚われて生きている人の葛藤を描いた本作。被害者が一番苦しんでいるのはもちろんだが加害者も全く別の苦しさを持ち続けている。
殺人や借金、浮気に関しても殺すこと、お金を借りること、腰を振ることは簡単だが生き返らせることはできないし、お金を返すことは簡単ではない。裏切った人の信用を取り戻すことも難しい。それをどう乗り越えるか。友罪は最後まで誰も乗り越えることが出来ていなかったと私は捉えている。
乗り越える、罪を償うことはできなくとも誰かに心を許すことで救われることもある。いじめの一番のケアとして有効なのは話を聞くことだと聞くが、あながち間違いでないと感じた。
長くなってしまったが、本作は良い映画だと思う。レビューを見る際は、起承転結に気づけない、演技力をチープと捉えるような感性の乏しい悪魔のような評価者の意見に惑わされないことが大切だ。
以上
半分だけ観ました
中心となっていた少年Aが幼児を殺害するテーマは、2011年放映ドラマ「それでも生きていく」でも描かれたテーマだった。
あのドラマでは被害者家族役だった瑛太がこの映画では加害者の役柄であった。7年後に逆の立場を演じる気持ちを察するがどんな心境だったろう。
このドラマは加害者の少年Aこと鈴木(瑛太)と、程度の差はあるものの、学生時代に友人の自殺を見殺しにしてしまったという罪を抱えた益田(生田斗真)が、町工場で知り合い共に働き同じ寮に住み、次第に友人となり、お互いの気持ちを少しずつ伝えあっていくところの「友情」もテーマになっていた。
ただ、複雑なのは、同時進行で、交通事故で複数の子供を殺した加害者の息子を持つ家族の苦悩(タクシー運転手の佐藤浩市ら)を描き、さらには、少年Aと少年施設で関わったの富田靖子の娘との家族関係も描いていた。また少年Aに助けられ恋をする女性(夏帆)はアダルトビデオに出演し逃げ親や実家近所に映像をばらまかれた過去があり、さらにつきまとわれ、レイプまでされてしまう(僕は正直レイプシーンだけは、いちばん見たくなくて、そのシーンいるのかなと思ってしまう)、いろんな重い内容が詰め込まれていてなんかなあ。映画の枠としては、ちょっと詰め込みすぎである。
テーマがもともと重いのに重すぎ重量オーバーである感がいなめない。
益田と鈴木の2人の関係性を深く濃く描いたほうがシンプルで良かったのではないかなと思いますね。
加害者も被害者も大変。被害者は一生、憎しみや、悲しみ、喪失感にとらわれた人生を送り苦しむし、加害者は罪を一生償い生きていかないといけない。その家族もである。しかし加害者とて更生して、幸せになる権利はある。鈴木の苦悩もよく表現されていました。
益田は純粋に大切な友人の鈴木を理解したくて、少年Aの事件を探り出したが、益田の彼女?彼女の上司?がカラオケ店での写真を雑誌に掲載、勝手に流出させた。怒った益田に対して「みんなが知りたがっていることは伝えなければならない」とか言い放つ。ふざけんなよ、なめんなよである。
益田と鈴木の気持ちを踏みにじっておいて何様なんだよ、罪を償って一生懸命に生きている人間をいつまで、さらし者にするのか。そんな情報なんて私なんかは、全く必要としない。読者が求めているとするなら、興味本位であり、そんなのは、知る権利とは言わない。履き違えている。そして夏帆も離れて行く。鈴木は寮を出る。
ラストシーンは、しかし良かった。
益田が、最後に鈴木に対してメッセージをホームページに載せるとともに、語り始める。過去の学生時代にたすけられなかった友人について真相を告白する。そして、けじめをつけるために自殺現場に赴き、号泣しながら叫ぶシーン。涙が溢れた。益田は純粋な友人想いの優しい人間である。しかし友人の学が死を決意し、助けを求めたとき、送った最後の言葉は「勝手にすれば」だった。それは後悔しますね。
そして、益田が振り向いた時に、そこには鈴木がいた。最後の手紙の鈴木に対する言葉は「生きていて欲しい。友達だから」
だ。なんだかんだ最後に救いがある、
だから、いい映画なんです。