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男はつらいよ 寅次郎と殿様評論(7)
シリーズ19作目。
OPの夢は、寅さんが鞍馬天狗に。妹と再会も束の間、命を狙う悪党と大立ち回り。
さて、何故今回OPが鞍馬天狗かと言うと…
まずは、序盤の騒動。
5月。立派な鯉のぼりを上げたとらや。そこへ寅さんが帰ってきて、満男の土産におもちゃの鯉のぼりを。慌てて鯉のぼりを隠そうとするも、バレて寅さん不機嫌。
そして、ファンの間では有名な“トラ”。誰かが野良犬に“トラ”と名付け、何故かとらやで面倒見る事に。言うまでもなくそれを知って、寅さんプッツン。
犬に自分の名前が付けられりゃあ誰だっていい気分ではないが、いい年して野良犬みたいにフラフラしてる寅さんも…。
旅先は、四国・伊予大洲。
そこで寅さんは、時代錯誤なヘンな老人と出会う。
気に入られ、招かれた先は、お城みたいなお屋敷。
ヘンな老人ではなかった!
控えおろう、控えおろう!
この方を何と心得る。
大洲城18代目の城主、世が世なら殿様であらせられるぞよ!
演じるは、往年の大スター、“アラカン”こと嵐寛寿郎。
アラカンと言えば、鞍馬天狗。OPの夢はアラカンへのオマージュ。
喋り方も立ち振舞いも時代劇チックで浮世離れした現代の殿様を、面白可笑しく、お茶目に演じている。
尚、アラカン主演の“鞍馬天狗シリーズ”は、戦前~戦後、製作会社を幾度も変えながらも46本作られ、寅さんに継ぐ邦画屈指の長寿シリーズである。
この殿様に仕える執事に、三木のり平。
殿様に頭上がらず、寅さんに怪訝を示し、アラカン/渥美両名優と絶妙な掛け合い。
さすがの名喜劇役者っぷり!
寅さんは殿様からある頼み事をされる。
それは、亡き末の息子の嫁にどうしても一目会いたく、探して欲しい。
分かってるのは、今は東京に住んでて、名は“マリコ”ってだけ。
安請け合いするが、殿様は本気だから、さあ困った。
柴又に帰ってから、“マリコ”捜し。それも、まず近所の家から一軒一軒訪ね歩いて。
…でも、実は寅さん、その“マリコ”にすでに会っていた!
大洲で殿様に会う前、馴染みの宿屋で、何か訳アリそうな一人旅の若い女。
ほんの一晩だけの親交だったが、寅さんの紹介でとらやを訪ねて来る。
名は、鞠子。
奇遇にも同名だが、何と何と何と!亡き夫が大洲の人で、義父は殿様みたいな人…!
居た!
(この辺のご都合主義はご勘弁を…)
マドンナは、真野響子。寅さんの世界にぴったりの日本美人。
念願叶って会えた殿様は、涙ながらに息子に尽くしてくれた感謝を伝える。
義父と亡き息子の嫁の対面はわだかまり無く、温かく。
当然、寅さんは鞠子に一目惚れ。
そんな時、再び殿様からお願いが。
大洲の屋敷で鞠子と“父娘”として暮らしたい、鞠子の再婚相手として寅さんを…!
寅さんファンならオチは大体察し付く。
鞠子は東京で仕事し、自立した女性。
まだ心の中に夫は居るも、それも含めて理解してくれる男性との将来を考えていて…。
寅さんも殿様もフラれたが、自分で自分の幸せを見出だした鞠子の選択は正しい。
個人的にもう一つ注目点は、殿様の長男役に東宝特撮作品でお馴染み、平田昭彦。
博士役が定番だが、本作でのニヒルでイヤミなインテリ役もハマっている。
前作前々作とシリアスなテーマ続いたが、本作はこれぞ寅さん!とでも言うべきストレートな喜劇。
SPゲスト、アラカンの妙演も相まって、カラッと明るく、楽しく!
大富豪のお殿様の登場で、今回も飛び道具系の話だったのだが、嵐寛寿郎の殿様ぶりが時代錯誤で面白かった。召使も面白い。寅が人探しをする、ミステリー的な展開も楽しい。四国まで頻繁に柴又から行き来していて、お金が心配になるほどだった。
さくらに渡った手切れ金がどうなったのかと、殿様がお礼に家来に持たせた重箱のようなお土産の中身がなんだったのか、気になった。
「男はつらいよ」シリーズ第19作。
Huluで「HDリマスター版」を鑑賞。
大洲の殿様がめちゃくちゃ面白かったです。
今のところ、ベスト・オブ・サブキャラ(笑)
「殿中にござる!」「おのれ上野介~!」(笑)
ポスターのような寅さんが殿様をおんぶしているシーンはありませんでしたが、その構図が本編でのふたりの関係性を見事に表現していて、上手いなと思いました。
【余談】
こういうご都合主義の偶然、好きです(笑)
・鯉のぼり騒動。別に隠さなくても…
・犬の名騒動。確かに「それを言っちゃあおしめえよ」
アラカン殿様の死んだ息子の嫁探し。執事吉田が面白過ぎる。鈍感マドンナ(笑)真野響子も美しい。
今作は小ネタが抜群。「耄碌ジジイ、歯抜けババア」
・鞠子さん発見。殿様との邂逅が胸熱。
・今回は語りのみのさくらとの別れ、これも胸熱。
笑いあり。涙あり。このシリーズ、ほんと飽きません。