中華圏では初めてカンヌ国際映画祭で受賞を果たした「侠女」などで知られる武侠映画の巨匠キン・フー監督が、1975年に手がけた伝奇ロマン。11世紀、宋の時代。若き学僧の雲青は、写経に集中できる静かな環境を求め、崔という男に案内された山奥の城跡にある廃屋を訪れる。そこで、近所の世話好きな夫人に引き合わされた、妖艶で美しい娘・楽娘と結婚した雲青だったが、次第に周囲で奇妙な出来事が起こり始める。実は楽娘の正体は妖怪で、雲青の持つ霊界を支配できる経典を狙っていた。そこへひとりの道士が現れ、楽娘と道士の対決が始まる。日本では短縮版が映画祭などで上映されてきたが、2018年11月、192分の4Kデジタル修復・完全全長版として、初の劇場公開。
山中傳奇評論(4)
キン・フー監督の作品は初めてだ。ホラー、ファンタジー、アクション、ロマンス、サスペンスが全て詰まった娯楽大作である。ワイヤーアクション、火薬、逆回転など素朴な技術を多用し、摩訶不思議な世界を現出させている。
3時間半の上映時間は少し長すぎる気もしたが、インターネットはおろか、テレビですら一般家庭に普及していなかった時代の映画の役割を考えると理解できないことはない。当時の観客は、メディアで外の世界を見聞きしたり、観光旅行に出かけることが珍しかったのだから、主人公の旅路を多様なロケで描写することで長くなってしまうことはサービスだったのだろう。観客は山紫水明の世界への旅に誘われる。
オム・マニ・ペメ・フムというチベット仏教のマントラがたびたび唱えられているが、先日の東京フィルメックスで観た「轢き殺された羊」でも登場人物が口にしていた。最も一般的なマントラということらしい。ペメのアルファベットつづりはPadme、つまり、アナキンの嫁さん、ルークとレイアの母親の名だ。
旅する主人公が背負う四角いリュックみたいなの。しかも、小さな屋根まで付いている。チャイニーズゴーストストーリーでレスリー・チャンが背負っていたのも、この作品の影響か、それとも中国の時代劇では定番の小道具なのだろうか。
とんでもなかった。
古い映画とはいえ、
脚本が面白くないし、スロー過ぎて、
何度帰ろうと思ったか。。。
映画は好みがあるので、好きなひとは好きな作品かもしれませんが、
個人的に絶対お勧めはしない作品です。
新日本紀行的壮大な音楽と大自然映像の中展開される、台湾=香港ゴーストストーリー。
パーカッション妖術バトルが生み出すエクスタシー。
悪女に肩入れしたくなる、カルトなファンタジー。
煙にまかれて不思議な魔界に誘われる、ワン・アンド・オンリー。
大まかに時間ごとに区分けすれば、開始から1時間目は主人公が目的地へ行くまでのロード・ムービー。
2時間目からは主人公を取り巻く奇妙な出来事が続くミステリーで、そして残り1時間12分が全ての謎解きも付随したアクション…という流れ。
バトルといってもいわゆる功夫や剣術ではなく、「音」で闘う斬新さ。
『カンフーハッスル』では音の攻撃をVFXで可視化していたが、こちらは本当に音「だけ」で闘う。
妖艶なシュー・フォンと可憐なシルビア・チャンという対比もさることながら、後半で両者笛の音色が奏でる際に差し込まれる映像も、片や獲物を狙うキツツキと、片や優雅に空を舞うカモメというあたりも徹底している。
主人公が終始キョドっていて、あまり成長が感じられないままで終わるが、そうした描写も込みで含みを持たせるラストも、いかにも寓話的。
今回追加されたというシーンは、確かにカットしても良いのでは?と感じるのも事実だが、この冗長なクドさも込みで、観客は主人公同様に奇妙な体験ができるのだ。