黒木華と柄本佑が演じる漫画家夫婦の虚実が交錯する心理戦を描いたドラマ。漫画家・佐和子の新作漫画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」。そこには、自分たちとよく似た夫婦の姿が描かれ、さらに佐和子の夫・俊夫と編集者・千佳の不倫現場がリアルに描かれていた。やがて物語は、佐和子と自動車教習所の先生との淡い恋へと急展開する。この漫画は完全な創作なのか、ただの妄想なのか、それとも夫に対する佐和子からの復讐なのか。現実そっくりの不倫漫画を読み進めていく中で、恐怖と嫉妬に震える俊夫は、現実と漫画の境界が曖昧になっていく。佐和子役を黒木、俊夫役を柄本が演じ、金子大地、奈緒、風吹ジュンらが顔をそろえる。監督は「ANIMAを撃て!」「いたくてもいたくても」の堀江貴大。オリジナル企画のコンテスト「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2018」の準グランプリ受賞作品の映画化。
先生、私の隣に座っていただけませんか?評論(20)
2段落ちのどんでん返しも、今ひとつカタルシスに欠ける"オチ"という印象でした…。
それは、柄本佑演じる夫が根っからの悪人ではなく、どこかとぼけた感じで憎めないキャラクターだったからかも知れません。
また逆に、黒木華演じる妻が、実はかなりの粘着質な性格で、弱々しい旦那を懲らしめるという図式が、どこかアンバランスだったからかも知れません。
旦那がとんでもない極悪人なら、スカッとしたラストシーンの演出となったんでしょうけど…
このなんか頼りない旦那が、最後は可哀想でしかありませんでした。
もっともっと夫とその相手を追い込む怖い展開も可能だったのに、このくらいにしておいた感が…
風吹ジュンのお母さんも良かった。
哀愁シンデレラと同じグランプリで準優勝した作品(受賞した年度は別かもしれないが)ということで少し比べてしまうところがあった。
哀愁シンデレラがありえない常軌を逸した家庭を描いていたがこの作品はありえそうな、いかにもリアルな夫婦が描かれている。
そのリアルさは序盤から現れている。
最終回の原稿を上げて編集者に受け渡す。
編集者と夫の関係に薄々気づいていながらも、見ないふりをする。
キスする現場を目撃しても見なかった様なそぶりをする。
夫は夫で不倫がバレているのではと思ってもどこかに希望を持って不倫していることを「話さない」。
こんな話せない夫婦が迎える結末としてこれ以上のものは無かったなと思った。
途中から教習所内の話を妻の漫画の中でしかしれないのも観客に独特な効果を生んでいた。
徐々に夫の方に共鳴していく感じがなんともいえない。
この共鳴させていくのが終盤クライマックスからオチに向けてより良い効果を生んでいた。
なぁんだという緩和から結末のキュッと締まる感じまで最高の感覚だった。
演技に関しては黒木さんや柄本さんは言うに及ばず、奈緒さんがちょっと頭がぶっとんでいる編集者を好演していた。
しかし、女性をターゲットにしたような感じでオイラみたいなおじさんにはう〜んな作品だった。
終始淡々と進む感じの静かな映画やった。
原作を活かしきれなかったのかいな。