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キング 罪の王評論(7)
この近親相姦ネタにしても、ほんとに惚れたから(もしくはやりたかった)近づいたのか、復讐のために近づいたのかはガエル君の表情からは読み取りにくい。無表情で恋愛や殺人をやりのけてしまう往年のアラン・ドロンさえ彷彿させるガエル君なのです。舞台となる地はテキサスの小さな町。父親のデビッドは牧師であるから、キリスト教でもプロテスタント。ブッシュの出身地であることからキリスト教原理主義であり、妊娠中絶には絶対反対の立場をとっているものと想像できるし、ひょっとすると、ブッシュ批判の映画であるとも思えるくらいです。とにかく16歳の女子高生を妊娠させることが主人公にとっては大きな復讐の一歩だったのです。
理解し難いところとして、牧師一家はアーチェリーで鹿狩りをして残酷にさばいてしまう描写もあるし、対する主人公も残酷な殺人を犯してしまうこと。善悪の区別をはっきりさせない映画であるともとれるし、世の中いい人がどこにもいないといった厭世主義的な映画とも思えるのです。家族の崩壊と再生を描いた温かい映画がある一方で、この映画のように一旦絆が失われたら取り返しのつかないことにもなるという教訓なのかもしれないが・・・
『リトル・ミス・サンシャイン』でも名演技だったポール・ダノ君はバンドで活躍したり弾き語りをしたりして、歌でも大活躍でした。が、歌詞はキリスト教的で説教臭い内容。ダーウィンの進化論には猛反対という演説もしていたし、やっぱりキリスト教批判の映画なのかな・・・
この後どーなるのかと思いながら最後まで観れた。
ハラハラ系。
シャイでピュアな人だと思わせて、どこまでが演技で計算だったのか…。
おもしろかったー。
作品紹介を見てサスペンスフルな内容は予想してましたが
観終わった後に残ったのはその予想を遥かに超える複雑な感情でした…。
果たして本当に復讐だったのか。
シングルマザーに母一人子一人で育てられた男。
除隊して自由になった彼が真っ先にやりたかったことは
まだ見ぬ父に会いに行く。
きっかけはただ純粋にそれだけ…
ある日突然に 忘れかけていた過去の遺物に直面し、
自身の行いへの罪の意識から防衛本能を過剰に働かせた父親。
その一瞬が全てであった若者にはあまりに辛い…
始めは一時の感情的な行動だったのかも知れない。
不運と感情の高まりが重なったアクシデント。
そこからはもう引き返せない。
ほんのひと時訪れた平穏な日々。
初めて感じる父親の、そして家族の温もり。
協会でのあの至福の一瞬を頂点に
あとはもう ただただ加速度的に転がり落ちるだけ…。
これは天罰? 復讐?
天罰だとしたら誰に対する罰なのか。
復讐を企てた本人か。父の犯した過去の過ちに対する罰か。
いずれにしても あまりに代償は大きすぎた…。
切なく、辛く、やり場のない二人の複雑な感情の交錯するラストは秀逸。
秀作です。
※他サイトより転載(投稿日:2009/01/29)
極悪無比の主人公を演じたガエル・ガルシア・ベルナルの、極普通な好青年のイメージは返って効いていて、ウィリアム・ハートの堅物牧師の演技と共にリアリティある表現になっている。
人間の所業には限りがないこの世の無情さを、、、思い知れということなのか!?