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ラスト サムライ評論(20)
見たのはDVDが出た直後。それを購入した知人に借りての視聴だったので10年以上前。
細かい部分の記憶はないがかなり印象的な作品だった。
アメリカ人から見た日本。
桜の色は八重じゃなければほとんど白に見えるくらいの淡いピンク色であるという認識がまず欲しい。じゃなきゃ商店街の電柱に刺さってる造花色になる。
さて内容ですが。
渡辺謙は西郷さんだと思って見た。
西郷は島津斉彬に忠誠を尽くしていたあまり、その死後弟の島津久光が君主になっても彼をリスペクト出来ずに何度も島流しにあっている。
それを再三 中央に引きずり出すのは幼馴染みの大久保利通であった。
その後、大政が奉還されて明治が始まり、岩倉らがヨーロッパに視察にいってる間に政治を任されるも帰国した彼らとの意見が合わず終いに「征韓論」を言い出しそれが決定打となり中央政治から去る。
武士はもはやただの厄介者であったその時代にあって、彼らはそれぞれどう生きるべきか、そしてどう死すべきか答えを出せずにいた。
「北の零年」という映画では温暖な気候の土地の大名が北海道の開拓地をあてがわれ、その土地に殿を迎えるべく開墾を始めるも稲の生育の北限を過ぎている土地では叶う訳もなくその上 着る物も持たず餓死凍死してしまう人々の姿を描いており、渡辺謙自身がその筆頭家老を演じている。
話を戻すと、
武士という、既にいらない教義を頑なに身に纏ってしまい、明治においての生き様はもはやないと確信した男たちは、いかにして死すべきかだけが目的で西南戦争に突入する。
勝てるであろう戦術も使わず、ただ潔く死ぬその場所を求めて。
西郷は参戦を渋るも戦いにおけるカシラとなる人物が必要であったため再三の要請に従いリーダーとなる。
作家の浅田次郎氏は、これに見事な推察をつけていて、西南戦争は大久保と西郷が、その後起こす日清戦争のプレ試合だった、集団戦法をした事のない日本の軍隊にそれを実践させる予行演習として利用したのだ、というネタで書かれた本があるが、これを読んで、ない話ではないと感じたものだった。
西郷は、時代に不必要となってしまった武士たちの死に場所を引導すべくそこにあった。
仁王立ちとなり、我が身に当てろといわんばかりに立ち尽くした田原坂。
史実と重ね合わせ
それらを思って見ると、この映画は号泣ものなのである。
テーマとなっている武士道や和の心の部分は、日本人であることを誇らしく思える一方で、この政府同様にいまの日本にはもはやそんな心が欠けていて、ちょっと恥ずかしく情けなくなる。
とても迫力ありました。
トム・クルーズがかっこよかったです!
「戦場を見た者は、皆そう思うものだ。そんな時、わしは先祖が建てたこの寺に戻る。そして思い出す。"人も桜もいつかは散る"と。吐息ひとつにも生命が宿り、一杯の茶にも、敵のすべてにも生命があると思う。それが侍の生き様だ」
「完璧な桜の花の美は一生をかけても見つけるに値する」
いいね。ラストは、アメリカ人的だけども。